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名古屋地方裁判所 昭和62年(行ウ)5号 判決 1990年5月28日

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が昭和五六年一二月七日付けで原告に対してした戒告処分はこれを取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文と同旨

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、三重大学教育学部において小学校教諭一級普通免許及び養護学校教諭一級普通免許を取得し、昭和四八年三月に同大学を卒業後、豊田市公立学校教員を経て、昭和五一年四月碧南市公立学校教員に任用され、昭和五三年四月に愛知県碧南市立大浜小学校(以下「大浜小」という。)教諭に補された。

2  被告は原告に対し、昭和五六年一二月七日、「原告は昭和五六年九月三〇日校長が承認しないのに夏期厚生計画参加のため一三時五分より一七時一〇分までの勤務を放棄した」として、地方公務員法(以下「地公法」という。)二九条一項一号及び二号により戒告処分をした(以下「本件処分」という。)。

3  原告は、本件処分を不服として、昭和五七年二月四日、愛知県人事委員会に対して不服申立を行ったが、同委員会は、昭和六一年一二月二三日、本件処分を承認する旨の判定をした。

4  しかしながら、本件処分は違法であり取消を免れないから、原告は本件処分の取消を求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因1ないし3の事実を認め、同4を争う。

三  被告の主張

1  本件処分事由

原告は、昭和五六年九月三〇日、校長の承認がないのに夏期厚生計画に参加すると主張して勤務校である大浜小から退出し、同日午後一時五分から午後五時一〇分までの勤務を欠いた。

2  本件処分の適法性

(一) 碧南市教育委員会(以下「市教委」という。)が実施した夏期厚生計画に参加するには後記3のとおり校長の承認を必要とするところ、当時校長は、原告が右参加のためにした職務専念義務免除申請につきこれを承認しない旨を明言し、かつ、平常どおり勤務するよう命じていたのであるから、原告の前記行為をもって地公法上の職務専念義務を免除されて夏期厚生計画に参加したものとみることは根拠を欠いている。

(二) したがって、原告の前記1の行為は勤務の放棄とみざるを得ず、地公法三二条、三五条、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「地教行法」という。)四三条二項に定める職務上の義務に違反している。

(三) そこで、被告は、原告の右職務上の義務違反について、原告の道義的責任を追及し、もって公務員秩序を維持し、綱紀の粛清を図るため、市教委の内申(地教行法三八条一項)をまって、原告の前記行為が地公法二九条一項一号及び二号に該当するものと認め、本件処分に及んだ。

(四) 被告は、職員に職務上の義務違反たる事実が存する場合、処分を科するに当たっていかなる処分を選択するかについての裁量を委ねられているところ、原告の前記行為は後記4のとおり、所属長による不承認の意思が明確に示され、かつ平常勤務につくよう重ねて説得されたのにこれに応ぜず、自己の考えに固執し、あるいは権利の主張に走り、しかも、合理的必要性も乏しいのに、ことさらに自己に課せられた義務を放棄したものであるから、後記4の諸般の事情を考慮したとしても義務違反の情状は重いといわざるを得ない。

3  夏期厚生計画の法制

(一) 夏期厚生計画は、地公法四二条に基づき県費負担教職員の服務監督権者である市町村教育委員会が職員の元気回復策として夏期に実施しているものであり、その内容は県立学校職員の例により取り扱われている。

(二) 職員が夏期厚生計画に参加する際の服務上の取扱は、各地方公共団体の制定した職務専念義務の特例を規定した条例等の定めるところにより、碧南市立学校職員にあっては、碧南市の制定した碧南市職員の職務に専念する義務の特例に関する条例(昭和三六年碧南市条例第二三号。以下「職専免条例」という。)の定めるところに従い、市教委の当該職員に対する夏期厚生計画への参加承認によって地公法三五条に規定する職務専念義務が免除される。なお、市教委は、この承認に係る専決権を各学校長に与えている。

(三) 職務専念義務の基本は、公務優先の原則を前提とし、例外的に職務専念義務を免除することが公務の民主的かつ能率的な運営に支障がないと認められる場合にのみ、これが免除されるべきものである。そして、職務専念義務の免除については、労働基準法が基本的権利として付与する年次休暇とは異なり、職員の申請に対し承認権者は裁量によって承認するか否かを決すべきものであり、承認がないのに義務免申請をしただけで職員が職務専念義務から解放されることはない。

4  本件処分に至る経緯

(一) 昭和五六年の夏期厚生計画について、愛知県教育委員会は、昭和五六年六月一七日付け事務連絡(教職員課長名)によって、事前に予定される概要を各教育事務所長に通知し(ちなみに碧南市を所管する西三河教育事務所長は六月一八日付けで当該文書の写しを市教委に送付し、市教委は六月二三日の市内小中学校長会で各校長に当該文書の写しを配布した。)、その後、昭和五六年六月二三日付け県教育長通知(五六教職第三一二号)によって正式に各教育事務所長、各市町村教育委員会あてに夏期厚生計画の実施内容を通知した。

なお、愛知県教育委員会の発した前記昭和五六年六月一七日付け事務連絡及び昭和五六年六月二三日付け県教育長通知の内容は、同一のものであった。

(二) そして、市教委は、市内各小中学校長あてに昭和五六年七月二日付けをもって学校職員に係る夏期厚生計画を県立学校職員の例により実施する旨、前記同年六月二三日付け県教育長通知の写しを添付のうえ通知した。

この通知の要旨は、職務専念義務の免除の性格に照らし、校務の円滑な執行に支障を来さない範囲において、<1>夏期における職員の元気回復を図り、健康の維持向上及び事務能率を増進させることを目的としていること、<2>実施期間及び日数を昭和五六年七月一日から同年九月三〇日までの間において六日の範囲とする。ただし、教育公務員特例法二〇条の適用又は準用を受ける職員にあってはその職務の特殊性にかんがみ、つとめて同年七月二一日から同年八月三一日までの間(夏季休業日の期間)に参加するものとすること、<3>参加の方法は、公立学校共済組会愛知支部が指定する厚生施設の利用等によること、<4>参加手続は、所定の承認簿に参加の方法及び行先を明記し、あらかじめ校長の承認を受けること、<5>校長は、この計画の趣旨に基づき所属職員が普遍的かつ平等に参加できるようあらかじめ実施計画を立てるものとすること等である。

(三) 大浜小鳥居修校長(以下「鳥居校長」という。)は、市教委の通知を受け、昭和五六年七月四日の職員朝礼の席上、夏期厚生計画の概要を説明した。すなわち、「教員がこの計画に参加する場合にあっては、教育公務員の職務の特殊性から授業等に支障のない時期、すなわち、七月二一日から八月三一日までの間に参加することを原則とする。もし、夏休み以外の日に参加を希望する場合には、夏季休業期間中の行動計画等を定める七月二〇日ころまでにあらかじめ申し出があれば別途考慮する。」旨を全職員に伝達した。

この後、井上豊教諭が夏期厚生計画について、「組合で話し合った結果、七月と九月の土曜日にローテーションを組んで取るとよい、という案が出された。」旨の発言をなし、鳥居校長が「その案は、将来的な一方法ではあっても、現状では無理である。」旨の答弁をする、というやりとりがあった。

また、鳥居校長は、同月六日の終礼時にも、教頭を通じて前記見解を伝達した。

(四) 原告は、九月二二日午前、校長室を訪れ、鳥居校長に対し「(九月二七日(日)の)運動会がすむと、その後は授業の遅れを取り戻す必要があり、参加できなくなると思う。したがって、九月二五日に夏期厚生計画に参加したい。」旨申し出た。これに対し同校長は、大要「夏期厚生計画については夏休み中に参加するのが原則であり、それ以外の日に参加しようとするならば、夏休みの計画段階の七月二〇日ころまでに申し出るよう伝えたはずである。今ごろ申し出られても学校運営上困るんだが……。」と不承認の意向を伝えた。

そして、九月二四日、同校長は原告に対し、九月二五日(金)は、当該学校の運動会の前々日であり、授業等(運動会の練習など)に重大な支障を来すおそれがあることを理由に、「二五日の厚生計画の参加は認められず、職免は承認できない。」旨を述べるとともに、付随的理由ないし職免申請を思い止まらせる事由として<1>本校においては、夏季休業中以外に、夏期厚生計画への参加を申し出た教員は他におらず、原告に承認することは公平性を欠く、<2>例外的に夏季休業中以外に厚生計画に参加したい場合は、夏季休業中の行事計画等を定める七月二〇日ころまでにあらかじめ計画を立てて申し出るように伝達してあったにもかかわらず、原告には、これらの手配と計画がなされておらず、この時期すなわち九月下旬の段階において急に申し出られても、校長としては承認できない、<3>もし、この場合原告に対し承認を与えるというならば、今後において、学内における他の教員との間の協調性に問題を生ずるおそれもありうると述べた。

これに対し原告は、「夏期厚生計画参加が認められないのは納得できない。明日は賃金カットを覚悟のうえでどうしても休みたい。」との趣旨を述べた。しかしながら、原告は、九月二五日出校し、平常どおり勤務についた。

(五) 九月二九日の午前、原告は校長室を訪れ、鳥居校長に対し、翌三〇日の午後厚生計画に参加したい旨申し出た。そこで、同校長は、教頭等とも協議した結果、三〇日は平常日課による授業日であり、授業等に支障が生ずるおそれがあることの外に、前記<1><2><3>で述べた如く、他の教員との公平性を欠くこと、事前(夏休み計画前)に手配・計画がなされていなかったこと、他の職員との協調性を欠き、学校内の秩序が乱されるおそれがあることから職免は承認しないとの結論に達した。そこで、同日午後、同校長は原告に対し前記理由を述べ、職免は承認できない旨回答するとともに、職免申請を思い止まるよう述べた。これに対し原告は、「原理、原則の立場をとって、どうしても職免をとりたい。南中の藤村伸次教諭の考え方は正しいと思うので、職場の信頼関係も失いたくないが、この際は同教諭との信頼関係を優先させたい。」と述べた。

また、九月三〇日の午前、原告は校長室を訪れ、同校長に同日の午後夏期厚生計画に参加したい旨再度申し出た。同校長は、この申し出に対し、授業等への支障のおそれがあること及び前記<1><2><3>を再度説明したうえ、「年次休暇による場合はやむを得ないとして、職免申請に対しては承認できない。したがって、勤務してください。」との趣旨を述べ、原告に対し再考を促した。

ちなみに、原告は、五年三組の学級担任として、音楽及び習字を除く全教科の授業を週二五時間担当するほか、校務分掌として児童会及びクラブ活動(卓球)に関する事務等が割り当てられており、九月三〇日の午後には算数の授業が一時間、クラブ活動(卓球)の指導が一時間予定されていた。なお、同日午後、原告は、退室に際し校長に対し、藤村伸次教諭とのかかわりを尊重して今回の行動をとる旨述べた。

そして、原告は、校長のなした「夏期厚生計画に係る職免申請は不承認である。したがって、平常勤務に就くように。」との言辞にもかかわらず、年次休暇の届出をすることもなく、九月三〇日の午後の勤務(午後一時五分から午後五時一〇分まで。ただし、休憩時間四五分を含む。)を欠いた。

なお、藤村伸次教諭とは、当時碧南市立南中学校に勤務していたもので、職免申請につき所属長のなした不承認にもかかわらず、年次休暇の届出をすることもなく、昭和五六年七月一六日の全一日にわたり勤務を欠いたことに伴い、同年八月一五日に給与の減額措置を受けるとともに、他の事由もあって同年一〇月一日付けで懲戒減給処分を受けている者である。

(六) 昭和五六年度の夏季休業日の期間は、昭和五六年七月二一日から同年八月三一日までの四二日間であるところ、原告の勤務を要する日は、職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例(昭和四二年愛知県条例第四号)による勤務を要しない日の一〇日間(勤務を要しない時間を日数換算した四日間を含む。)を除く三二日間である。しかして、原告は、この期間中一七日間は勤務(出勤一一日、出張六日)し、残る一五日間は、年次休暇四日の他、職務専念義務の免除承認(自宅研修一一日)を得ているのである。もし、原告がこの期間中に夏期厚生計画の参加を申し出れば容易に参加しえたことは明らかである。

ただし、地公法第三五条は、法律又は条例に特別の定めがある場合につき職員の職務に専念する義務を免除する規定を置いているところ、自宅研修は教育公務員特例法第二〇条第二項に、また、夏期厚生計画は前記職専免条例二条二項に依拠するものであり、いずれも地公法第三五条にいう法律又は条例に特別の定めがある場合に該当する。したがって、原告が授業等に支障のない日における職務専念義務免除の申請に際し、研究・修養に主眼を置いて自宅研修を選択するか、あるいは元気回復に主眼を置いて夏期厚生計画参加を選択するかの問題に帰着するのであって、申請をなさずして夏期厚生計画の参加が不可能であったということはできない。

5  賃金カット及び昇給延伸と本件処分との関係

賃金カット及び昇給延伸と懲戒処分とは全く別異のものである。

すなわち、原告は、前記勤務を放棄したことについて給与減額措置を取られているが、給与は、職員に勤務しない事実がある場合には服務監督権者の承認があった場合を除きそれに対応する分だけ当然に減額されるものであり、給与支払者である愛知県が原告の欠勤という事実に着目して、職員の給与に関する条例(昭和四二年愛知県条例第三号、以下「給与条例」という。)二九条により減額すべき額を計算したにすぎない。

また、昇給延伸は、給与条例六条五項及び「給料に関する規則の運用について」(昭和四四年四月一日付け四四人委第一七三六号)第五、二、(2)により、懲戒処分を受けるような非違行為をした職員は、他の職員と異なり、その非違行為のゆえに勤務成績が良好であるという証明が得られない結果、昇給措置が取られなかったというにすぎないものであるから、昇給延伸が任命権者による処分あるいは懲戒処分の効果ということはできない。

6  以上より、本件処分は法律上被告に付与された権限に基づき、その裁量の範囲内でしたものであり、適法かつ妥当なものである。

四  被告の主張に対する認否

1  被告の主張1の事実は認める。

2  同2、3は争う。

3  同4について

(一) 同4の(一)の事実は認める。ただし、被告の主張が昭和五六年六月一七日付け事務連絡と同月二三日付け県教育長通知の内容が同一であったという趣旨であるならこれを否認する。右事務連絡は事前の概要連絡であり、右県教育長通知は具体的実施要領であった。

(二) 同4の(二)を認める。

(三) 同4の(三)のうち、大浜小鳥居校長が昭和五六年七月四日の職員朝礼において被告主張の夏期厚生計画の概要を説明したことを否認する。同日及び同月六日の職員朝礼の経過は後記五2(一)(二)のとおりである。

(四) 同4の(四)、(五)のうち、被告主張の鳥居校長が原告に対し不承認の理由として述べた内容は否認する。その余は概ね認めるが、後記五2(四)の原告の主張に反する部分は否認する。

(五) 同4の(六)は争う。原告は、昭和五六年の夏季休業前に、同年七月二九日ないし同月三一日の三日間、夏期厚生計画に参加したい旨を鳥居校長に申し出たが、学校行事の都合を理由に参加できなかったものである。

4  同5、6を争う。

五  原告の主張

1  夏期厚生計画の意義・根拠

被告は、地公法四二条に基づき、従来より毎年六月になると、愛知県下の教育公務員を対象とする夏期厚生計画を立案し、実施してきた。

夏期厚生計画とは、夏期(通常七月一日から九月三〇日まで)には教育公務員においても暑さのため体調を崩し、かつ仕事の能率が低下することから、この時期における職員の元気回復を図り、あわせて事務能率の低下を防ぐ目的で休暇をとることを保障する制度である。年次有給休暇とは別に、全職員が、疲労の激しい夏期において、統一的かつ平等に健康保持のための休暇を気兼ねなくとることができるところに、夏期厚生計画の積極的な意義が存する。

なお、夏期厚生計画の実施主体について、法形式の上では市町村教育委員会がその主体とされているが、愛知県における運用の実態に照らすと、毎年六月ころ、まず被告がその年度の夏期厚生計画の骨子を決めて職員団体に提示し、内容を固めたうえで県の校長会と職員団体との間で合意の手続をとり、これを被告から各県立学校長、各教育事務所長、各市町村教育委員会へ下達するという仕組になっており、碧南市教育委員会は、事実上、市内の各校長への単なるメッセンジャー役をしているにすぎない。

2  夏期厚生計画参加の経緯

(一) 昭和五六年の夏期厚生計画を実施すべきことが碧南市小中学校長会と碧南市教員組合にも伝えられ、同年七月四日、原告が勤務する大浜小の職員朝礼(午前八時二五分開始)の席上、右教員組合の職場執行委員である井上豊教諭から原告を含む職員に対し、右組合からの連絡事項として「組合の執行委員会で、夏期厚生計画の話があった。県段階で合意ができて、今年は、夏休みのはみ出し部分(七月一日から同月二〇日までと、九月一日から同月三〇日まで)において七月と九月に各一日ずつ休みが取れるようになった。教務主任の神谷先生にローテーションを組んでもらって、実施したい。」との報告がされた。

右報告に対し、朝礼に参加していた大浜小の鳥居校長は、「組合でそのような話がなされたのであれば、当校においてもその意向に添って実施したい。」旨答えた。

原告は右のやりとりを聴いて初めて、碧南市においてもその年から夏期厚生休暇を取ることができることを知り、ぜひ参加したいと考えた。

(二) ところが、右朝礼の二日後である同年七月六日の職員朝礼において鳥居校長は、「一昨日、厚生計画についてローテーションうんぬんという話が出たが、県の教育委員会から第二の文書が来て、そこには、つとめて夏季休業中に取るように書いてあるので、できるだけ夏休み中にとるように。夏休み以外の時期の休暇についてはローテーションは組めない。どうしても夏休み以外の時期に取りたい人は私に申し出なさい。」と、強い口調で申し渡した。

原告はこれを聞いて、実施の内容がかなり後退したことに強い不満を覚えた。その結果、ローテーションは何ら組まれず、大浜小では同年の夏休み前には誰一人休暇はとれなかった。

(三) 同年の夏季休業(いわゆる夏休み。七月二一日から八月末日まで。)中の厚生計画参加については、原告は予め「夏期休業中予定表」に「七月二九日、三〇日、三一日の三日間、厚生計画に参加したい」旨を記入して学校へ提出した。しかし、鳥居校長と教務主任はこれを見て原告を呼びつけ、「七月二九日、三〇日は三年生と四年生の水泳強化訓練に出てほしい。七月三一日は市内水泳大会へ生徒を引率して行ってほしい。」と指示し、結局全部つぶされて原告は夏休み中の厚生計画参加ができなかった。

(四)(1) 同年の夏休みが終って九月に入り、原告は「九月三〇日で終ってしまう夏期厚生計画期間中に、せっかく認められた権利であるから、ぜひ一回は参加してみたい」と考えた。

(2) そこで、原告は、学校行事の日程をみて、同年九月二二日に右校長に対して「九月二五日(金)に厚生計画に参加したい」旨を文書で申し出た(文書の形式は、所定の「休暇・職免承認願」であった。)。

原告がこの日を選んだ理由は、大浜小では九月二七日(日)に運動会が予定されており、前々日の二五日は土曜日の半日日課が組まれ、児童たちは一、二時限目は運動会の練習、三時限目は大掃除という日程であったこと、原告の担任する五年生の児童は、五、六年生合同で組体操の練習をするが、これには井上豊教諭はじめ四人の先生が指導に当たることになっており、授業には最も支障がない日であったからである。

(3) 原告の右申出に対して鳥居校長は「たしか厚生計画は短縮期間中に取るように校長会で話合われたと思う。返事はしばらく待ってほしい。」と答えた(短縮期間とは、通常、夏休みの始まる直前の三日間と、夏休み終了直後の三日間をいい、この期間は午前中のみの短縮授業をする。)。

(4) 九月二四日

この日の午後四時ころ、原告は校長室へ鳥居校長をたずね、二二日の回答を求めたところ、同校長は承認できないと言った。

そこで、原告は同校から碧南市教員組合の沢田剛委員長(以下「沢田委員長」という。)へ電話して指導を仰いだところ、沢田委員長は「碧南市でも、校長会と組合との間で、はみ出し部分で一回、厚生計画に参加できるとの合意ができている。再度、校長と交渉するように」とのアドバイスを得た。

原告は、それを聞いて初めて、碧南市小中学校長会と同市教員組合との間で右のような合意ができていることを知った。

右同日、原告は同僚の井上豊教諭に同席してもらって再度校長に承認を求めたが得られなかったので、「合意事項があり、しかも授業への配慮をしているのに承認されないのは納得できない。明日は休みます。」といって帰宅した。

しかし、同日夜、沢田委員長から原告に電話があり、「明日休むのはまずい。各方面と交渉するから明日は出勤するように」との説得を受けたので、原告はそれに従うこととし、翌二五日は出勤した。

(5) 九月二五日

大浜小へ沢田委員長と鳥居拓碧南市教育委員会学校指導室長が来て、原告の厚生計画参加について校長と話合がもたれたが、結論は出なかった。

(6) 九月二六日

運動会の前日であったが、原告は平常どおり勤務についた。

(7) 九月二七日(日)

大浜小で秋の運動会が行なわれた。

(8) 九月二八日

前日の運動会の振替休日のため、学校は休みとなった。

同日夕刻、沢田委員長から原告へ電話があり、「いろいろ話合った結果、話がついた。休暇を取るなら、明日出勤してその準備をして下さい」と言われ、原告はやっと承認されると思って安堵するとともに、同委員長にねぎらいと感謝の言葉を述べた。

(9) 九月二九日

原告はこの日の朝、校長に対して「九月三〇日の午後、厚生計画に参加したい」旨の職免承認願と、同日午後の補欠授業計画書を提出した。

しかし、それでも校長は「あなただけ承認するわけにはいかない」といって、承認しなかった。

原告は、「不承認は納得できません。あすの午後、厚生計画に参加します。」と校長に告げて帰宅した。

(10) 九月三〇日

原告は午前中は出勤し、午後一時七分、厚生計画に参加するために、校門を出た。

(五) 原告は本件処分のほか、昭和五六年一〇月一六日、一〇月分の給与から三時間分の賃金をカットされ、同年一二月五日、期末勤勉手当から約六〇〇〇円をカットされた。

3  本件処分の違法性

(一) 職務専念義務免除不承認の違法性

夏期厚生計画は、参加者の申出をうけて、校長の承認の下に職務専念義務の免除という形式で参加するものとされている。校長による職務専念義務免除の承認は、免除をうける者の便益とこれにより影響を受ける地方公共団体の事務の支障の有無・程度を勘案してされる裁量行為の性質を有するものであるが、右裁量の範囲は無限定ではなく、職務専念義務を免除しても事務に支障をきたす虞れがなく、他方、その機会を逃しては権利行使の機会が失われるという状況において、特段の合理的理由もなく、ことさらに職務専念義務免除を拒むことは、裁量の範囲を逸脱し、もしくは裁量権の濫用と評価されるべきである。

本件において、次の事情があるから、鳥居校長が原告に対し、職務専念義務免除の承認を拒絶したことは、与えられた裁量の範囲を逸脱し、もしくは裁量権を濫用したものであり、違法かつ無効である。

(1) 原告は、昭和五六年の夏季休業終了時まで、碧南市校長会(以下「市校長会」という。)と同市教職員組合(以下「市教組」という。)との間で、はみだし部分において夏期厚生計画に一回参加できるとの合意があることを知らなかった。

(2) 同年の夏期厚生計画の実施期間は九月三〇日までと定められ、終期が目前に迫っており、この時期を逃すと夏期厚生計画参加の機会を失う結果になるのであった。

(3) 原告は、参加日時について慎重に検討し、最初九月二五日の半日を選んだものである。この日は金曜日であったが、運動会の前々日で土曜日の日課が組まれており、児童は、一、二時限は運動会の練習、三時限は大掃除をする予定であった。原告が担任をする五年生は、運動会では六年生と一緒に組体操をするが、指導教員は、原告が抜けても他に四名おり、授業への支障はなかった。

(4) 鳥居校長との話合に当たっては、原告は個人プレーをせず、組合執行委員の井上教諭にも同席してもらい、また、市教組の沢田委員長に指導を仰ぎ、同委員長と校長もしくは市教委との交渉に委ねるとの手順を踏んだ。

(5) したがって、沢田委員長の同日は休まないようにとの助言を素直に受けとめ、九月二五日の厚生計画参加は差し控えた。

(6) 九月三〇日の厚生計画参加希望を申し出るについても、同日の午後に限定し、しかも五時限の算数は自習プリントを事前に準備し、六時限のクラブ活動(卓球)には他に指導教諭がいた。このように、原告は、厚生計画参加に当たり授業やクラブ活動への影響を最小限にとどめるべく、配慮を怠らなかった。

(7) 九月三〇日は、厚生計画の実施最終日であり、厚生計画参加の最後の機会であった。

(8) 原告が、九月三〇日午後の勤務を欠くことにより、授業当事者に現実に何らかの支障や不都合が生じる虞れはなく、また、現実に支障や不都合は生じておらず、かつ、他の職員から不満が表明されたこともなかった。

(二) 本件処分の違法性

本件処分の前提となる鳥居校長の前記職務専念義務免除不承認が違法かつ無効であることは前記(一)のとおりであり、さらに、次の事情を考慮すると、原告が本件厚生計画参加のためにとった行動は、全体的に評価すれば懲戒に値する程度の違法性はなく、これに本件処分は違法であり、取消を免れない。

(1) 碧南市においては、昭和五六年の夏期厚生計画への参加、とりわけ夏季休業期間中以外のはみだし部分について、市校長会が「短縮期間中の午後」に限定する申合せをしたため、夏期厚生計画参加者が皆無となってしまい、本件の原告の行為は、右のようなおよそ「所属職員が普遍的かつ平等に参加できる」態勢ではない状況下でのものである。

(2) 鳥居校長を含め市校長会は、原告らの問題提起を受けて、その年の夏期厚生計画の実施方法が不備であったことを反省し、次年度は改善すべきことが決められ、事実、碧南市では昭和五七年には夏期厚生計画実施のためのローテーションが組まれ、全職員の夏期厚生計画参加が実現した。

(3) 市教委は、本件処分に関して被告に対し内申をするに当たり、わざわざ「参考事項」として「本人(原告)は相当分の給与を減額されるのを覚悟の上で」とか、「本人の行動は、先に……懲戒処分を受けた碧南市立南中学校教諭藤村伸次に同調したものであることを言明している。」などと主観的な余事記載をし、原告の行為があたかも権利行使に藉口した、ためにする挑戦であるかの如き印象を持たせようと作為している。被告は、これをそのまま鵜呑みにして、本件処分を決定した。

(4) 被告は、本件処分をするのに先立って、事実関係の調査をせず、原告の弁明を聞く機会も設けなかったものであり、適正手続の保障に欠けている。

(5) 原告は、教師としてはこれまで熱心かつ真面目に教育活動に取り組み、職場の上司や同僚の評価は高く、信頼も厚い。したがって、勤務成績も優秀である。このような原告に対し、懲戒処分を発令して非難する必要は全くない。本件処分は、「管理者の意向を無視して行動すると、こうなるぞ。」との警告的意味と、藤村事件の連鎖を断ち切る効果を狙ってされたものと考えられる。

六  原告の主張に対する認否

1  原告の主張1は争う。

2  同2について

(一) 同2の(一)のうち、昭和五六年七月四日の職員朝礼における井上教諭の発言内容は認め、鳥居校長の発言内容は否認し、その余は知らない。

(二) 同2の(二)は否認ないし知らない。

(三) 同2の(三)は否認する。

(四) 同2の(四)について

(1) (1)は知らない。

(2) (2)のうち、原告が昭和五六年九月二二日に鳥居校長に対し九月二五日夏期厚生計画参加のための休暇・職専免願を提出したこと及び同日が原告主張の日程であったことは認めるが、同日が授業に最も支障がない日であったことを否認する。

(3) (3)は概ね認める。ただし、鳥居校長の発言内容は正確ではない。

(4) (4)のうち、九月二四日、鳥居校長と原告が校長室において、同月二五日の夏期厚生計画参加の件で話し合ったこと、その際原告が職務専念義務免除の承認を求めたこと、鳥居校長が承認できない旨を伝えたこと及び同月二五日に原告が出勤したことは認め、その余は知らない。ただし、原告の発言内容及び鳥居校長との具体的交渉状況は正確ではない。原告及び鳥居校長の発言内容は前記三の4の(4)のとおりである。

(5) (5)のうち、結論は出なかったとの点は否認し、その余は認める。

(6) (6)、(7)を認める。

(7) (8)のうち、九月二八日が前日の運動会の振替休日のため学校が休みであったことを認め、その余は知らない。

(8) (9)は概ね認める。ただし、原告及び鳥居校長の発言内容は前記三の4の(5)のとおりである。

(9) (10)のうち、原告が午前中出勤したことは認める。なお、原告は午後一時五分に職員室を退出した。

(五) 同2の(五)は認める。

3  同3は争う。

第三  証拠<省略>

理由

一  請求原因1ないし3の事実及び被告の主張1の事実は当事者間に争いがない。

二  そこで、本件処分の適法性について判断する。

1  以下の事実は当事者間に争いがない。

(一)  被告愛知県教育委員会(以下「被告」又は「県教委」という。)は、昭和五六年度の夏期厚生計画について、昭和五六年六月一七日付け事務連絡(教職員課長名)によって、予定しているところの概要を各教育事務所長に通知し(碧南市を所管する西三河教育事務所長は同月一八日付けで当該文書の写しを市教委に送付し、市教委は同月二三日の市内小中学校校長会で各校長に当該文書の写しを配付した。)、その後同月二三日付け県教育長通知(五六教職第三一二号)によって正式に各教育事務所長、各市長村教育委員会あてに夏期厚生計画の具体的実施内容を通知した。

(二)  市教委は、市内各小中学校長あてに同年七月二日付けをもって、学校職員に係る夏期厚生計画を県立学校職員の例により実施する旨、前記県教育長通知の写しを添付のうえ通知した。右通知の要旨は、職務専念義務の免除の性格に照らし、右計画は校務の円滑な執行に支障を来さない範囲において、<1>夏期における職員の元気回復を図り、健康の維持向上及び事務能率を増進させることを目的としているものであること、<2>実施期間及び日数を昭和五六年七月一日から同年九月三〇日までの間において六日の範囲とする、ただし、教育公務員特例法の適用又は準用を受ける職員にあってはその職務の特殊性に鑑み、つとめて同年七月二一日から同年八月三一日までの間(夏季休業日の期間)に参加するものとすること、<3>参加の方法は、公立学校共済組合愛知支部が指定する厚生施設の利用等によること、<4>参加手続は、所定の承認簿に参加の方法及び行先を明記し、予め校長の承認を受けること、<5>校長は、この計画の趣旨に基づき所属職員が普遍的かつ平等に参加できるよう、予め実施計画を立てるものとすること等であった。

(三)  大浜小においては、昭和五六年七月四日又は六日に、鳥居校長が職員に対し職員朝礼において、夏期厚生計画についてはできるだけ夏季休業期間中に参加すること、どうしても右期間以外のいわゆるはみ出し部分の日に参加を希望する者はあらかじめ校長に申し出るよう伝達した。

(四)  原告は、同年九月二二日午前、校長室を訪れ、鳥居校長に対し、同月二五日に夏期厚生計画に参加したい旨を文書で申し出たが、同校長は承認に難色を示した。なお、大浜小では、同月二七日(日)に運動会が予定されており、前々日の二五日は半日日課が組まれ、児童は一、二時限は運動会の練習、三時限は大掃除という日程であり、原告の担任する五年生の児童は、五、六年生合同で組体操の練習をするが、これには原告以外にも四名の教諭が指導に当たることになっていた。

(五)  同月二四日、鳥居校長と原告は原告の右夏期厚生計画参加の件について話合を行ったが、結局、同校長は原告に対し、同月二五日の夏期厚生計画参加を承認することはできない旨を告げた。これに対し、原告は、同月二五日はどうしても夏期厚生計画に参加したい旨述べたが、結局、同月二五日は出勤し、平常どおりの勤務についた。

(六)  同月二九日朝、原告は鳥居校長に対し、翌三〇日の午後、夏期厚生計画に参加したい旨申し出、職免承認願と同日午後の補欠授業計画書を提出した。これに対し、同校長は、夏期厚生計画参加による職務専念義務免除の承認はできない旨を回答した。原告は、右不承認について納得せず、翌三〇日の午後は夏期厚生計画に参加する旨を同校長に告げた。なお、原告には、同月三〇日の午後、算数の授業が一時間、クラブ活動(卓球)の指導が一時間予定されていた。

(七)  同月三〇日午後、原告は校長の承認がないまま大浜小から退出し、午後の勤務に就かなかった。

2  <証拠>によれば次の事実を認めることができる。

(一)  県教委は、昭和五六年六月九日、愛知県教員組合(以下「県教組」という。)を初めとする教育関係四組合に対し、昭和五六年度夏期厚生計画実施要領案の内容の提示を行った。これに対し、県教組らは、右要領案中の実施期間の項のうち教育公務員に関する「その職務の特殊性にかんがみ、つとめて同年七月二一日から同年八月三一日までの間に参加するものとする」とのただし書き部分の削除を要求して交渉が行われ、その結果、県教委と県教組との間で、同年六月一一日、右ただし書き部分について、「七月一日から二〇日までの間及び九月一日から三〇日までの間にそれぞれ一回(一回とは平日の一日または土曜日の半日、残り日数は休業中)、授業に支障のない範囲でこの計画に参加できる」ものとすることの了解が成立し、かつ、この内容については、職員団体と校長会との間で口頭了解メモとして交換するものとすることで合意が成立した。

(二)  次いで、愛知県小中学校長会(以下「県校長会」という。)と県教組は、同年六月一八日、前記同月二三日付け県教育長通知(「夏期厚生計画の実施について(通知)」に係る夏期厚生計画実施要領(なお、この内容について前記のとおり前記同月一七日付け事務連絡によってその概要が事前に明らかにされていた。)の実施期間の項のうち教育公務員に関する「その職務の特殊性にかんがみ、つとめて同年七月二一日から同年八月三一日までの間に参加するものとする」とのただし書き部分(以下「ただし書き部分」という。)の取扱について、<1>同年七月一日から二〇日までの間及び同年九月一日から三〇日までの間において、授業等に支障のない範囲で、それぞれ一回の厚生計画参加を認める、<2>一回とは平日の一日または土曜日の半日をいう、との口頭合意をした。右合意事項について、両者はさらに口頭で了解事項を定めたが、その内容につき、県校長会の認識は、「1一回については確保するよう努力する。それぞれという他の一回については、実施が困難であるという認識で、できない場合もあるということで了解した。2授業等に支障のないよう実施するよう努力する。」ということであったが、県教組の認識によれば、「ア一回については確保するようにする。それぞれ一回ということについては、実施困難な面もあるので、できるよう努力する。イ全員が実施できるよう授業等に支障のないよう努力する。」というものであった(以下右合意を「県の口頭合意」という。)。

右合意・了解事項は、同年六月二〇日県教組から市教組に、同月二二日県校長会から碧南市小中学校長会(以下「市校長会」という。)長にそれぞれ伝達された。

(三)  市校長会は、市教委から夏期厚生計画実施についての意見を求められ、また、県の口頭合意を受けて碧南市における合意締結前にその準備のため開催された同年六月二三日及び同年七月一日の市校長会において、県の口頭合意中の「授業等に支障のない範囲」とは現状においては夏季休業期間前後の短縮期間中の午後に限るという趣旨の意見が大勢を占めたことから、はみ出し部分についての夏期厚生計画参加については、授業に支障が出ない形、すなわち、短縮期間中に一回認めることにする旨の方針を確認する申合せをした(なお、右申合せは市教組との交渉時には市教組側に特に示されていない。)。

(四)  市校長会と市教組は、同年七月二日、ただし書き部分の取扱について、口頭で合意したが、その内容は、市校長会の認識では、「昭和五六年七月一日から二〇日まで、又は九月一日から三〇日までの期間で授業等に支障のない限り一回認めるよう努力する」というものであり、市教組の認識では、「昭和五六年七月一日から二〇日まで、または九月一日から三〇日までの間で、授業等に支障のない限り一回とれる」というものであった(以下この合意を「市の口頭合意」という。)。

右合意事項については、同年七月二日市校長会から各小中学校長に、同月三日以降市教組から各組合員に、それぞれ伝達された。

(五)  大浜小においては、同月四日の職員朝礼の際の組合からの連絡時間に、同校教諭で市教組執行委員の井上豊教諭が同校職員に対し、夏期厚生計画についての市の口頭合意の内容について伝達したうえ、同席していた鳥居校長に対し、夏期厚生計画参加の具体的方法について善処を求めたところ、同校長は、ローテーションを組むなど必要な措置を取ることに好意的な姿勢を示したが、ローテーションを組むことについて教務主任の神谷教諭が消極的な意向を示したため、他校の実情を調査することになり、井上教諭が碧南市内の他校の調査をしたところ、当時はローテーションを組むという動きは出ておらず、結局、大浜小においても実際にローテーションを組むには至らなかった。

(六)  同月六日の職員朝礼の際、鳥居校長は大浜小の職員に対し、夏期厚生計画についてはできるだけ夏季休業期間中に参加してもらいたい旨述べ、夏季休業期間以外のはみ出し部分での参加は難しい、どうしてもはみ出し部分で参加したい者は短縮期間中(夏季休業期間の前後の各三日間)の午後なら参加できるから希望者は夏季休業期間中の行事計画を定める同月二〇日ころまでに予め申し出れば別途考慮する旨伝達した。なお、鳥居校長は、市の口頭合意の存在及び内容について認識していたが、同校長は、市の口頭合意中「授業等に支障のない限り」の意味については、前記(三)の市校長会の申合せに則り、右短縮期間中以外は授業等に支障があるものと理解しており、右短縮期間中に限り夏期厚生計画参加の承認をする方針であった。

鳥居校長の前記指示に対し、はみ出し部分での夏期厚生計画参加を申し出たのは井上教諭だけであったが、同教諭も結局学校行事等の都合により現実に参加することはなかった。なお、夏季休業期間前後の短縮期間中は一般的に学校行事等が重なっており、右期間中に全職員が夏期厚生計画に参加することは事実上難しい状況にあった。

(七)  原告は鳥居校長に対し、夏季休業期間中の同年七月二九日から三一日までの夏期厚生計画の参加を申し出たが、右期間中は学校行事が重なっており、その点を同校長から指摘されたため、原告は右参加申し出を撤回した。このため、原告は夏季休業期間中は夏期厚生計画に参加することがなかった。

(八)  原告は、夏期厚生計画についてせっかく認められた権利であるから一回は参加してみたいとの希望を持っていたところ、同年九月二二日、夏期厚生計画実施期間が残り少なくなったこと、同月二五日は運動会の前々日で半日日課であり、運動会の練習、大掃除などの日程が組まれているだけで、授業に支障が少ない日であると判断したことから、鳥居校長に対し、同月二五日に夏期厚生計画に参加したい旨申し出たが、同校長は、前記市校長会の申合せにより夏期厚生計画参加については短縮期間中に限って承認する方針であったため、原告の右夏期厚生計画参加申し出に対し承認を渋った。

同月二四日、右夏期厚生計画参加の件について、原告と鳥居校長との間で話合が持たれたが、原告は、同月二五日が授業に支障が少ないとの前記判断を説明するなどして承認を求めたのに対し、同校長は、碧南市においてははみだし部分について参加するとしても短縮期間中に限るとの申合せがあること、短縮期間中でないと授業等に何らかの支障が生ずるのは避けられないこと、他の職員が夏期厚生計画に参加していないのに原告だけ参加を承認することは好ましくないこと、はみ出し部分に夏期厚生計画参加を希望する場合には夏季休業前に申し出るよう指示したのであり、申し出た時期が遅いこと、運動会の直前に休まれるとせっかく盛り上がった気持ちに影響が生じること、右影響に対する他の教員の気持ちも考えるべきことなどを理由として不承認の意思を明らかにした。そこで、原告は市教組の沢田委員長に指導及び支援を要請した。沢田委員長は、同日、原告に対し、各方面と交渉するから不承認のまま欠勤することのないよう指導したうえ、同月二五日、大浜小において鳥居校長から不承認の理由を確認したところ、同校長は市校長会の申合せがあること等を説明した。

原告が結局同月二五日に出勤したことは前記のとおりであるところ、同月二七日、沢田委員長、市校長会杉浦一平会長、市教委鳥居拓学校指導室長(以下「鳥居室長」という。)の三者で会談が持たれ、右会談において、沢田委員長は原告の夏期厚生計画参加の件につき承認する方向で検討するよう求めたのに対し、全体としては前向きに検討する方向でその日の会談は終わった。

同月二八日、沢田委員長、鳥居校長、鳥居室長の三者で会談がもたれ、その席においては原告の問題で賃金カットとなるような事態は避けるとの立場で一致し、沢田委員長が、<1>不承認の理由を挙げて原告を説得する、<2>説得失敗のときは承認をする、ただし、原告の態度が横柄ならば承認しない、との提案をしたところ、鳥居校長はこれに対し異議を述べることはなく、鳥居室長としても鳥居校長の判断に任せるとの意向を示し、昭和五七年度からは夏期厚生計画についてもっと積極的に取り組むというような話も出たところから、沢田委員長は、全体の雰囲気として原告の夏期厚生計画参加は承認される方向に固まったとの感触を得、原告に対し、夏期厚生計画に参加するならその準備をするように伝えた。

(九)  そこで同月二九日、原告は鳥居校長に対し補欠授業計画書を提出し、改めて同月三〇日午後に夏期厚生計画に参加したい旨申し出た。同日午後は、原告の担任する五年三組では、五時限目は算数であり、原告は自習のためのプリントを用意しており、六時限目はクラブ活動の時間であり、原告の担当していた卓球では他に一名担当教諭がおり、卓球クラブに所属する約三〇名の児童の指導は一名でも可能であった。しかし、同校長は前記(八)で挙げた理由に加えて、当時運動会による授業の遅れを取り戻すために忙しかったこと、当日は数日後に学校訪問を控え、教務初め準備等で忙しく補欠教員の確保が困難であったなどの事情から、やはりこれを承認しなかった。原告から右不承認について知らせを受けた沢田委員長は、同月三〇日、市教委へ赴いて鳥居室長と話し合った結果、原告の夏期厚生計画参加の申し出が同年七月一六日に不承認のまま夏期厚生計画に参加するとして欠勤したため賃金カットを受けた藤村伸次教諭の主張に同調してされていることも不承認の理由であるとの判断に至った。また、沢田委員長は、同日、大浜小に赴いて鳥居校長に対し、同月二八日の会談における感触とのくい違いについて質したところ、同校長は、授業等の支障があること、校内問題もあることに併せて、原告の参加申し出と藤村教諭との繋がりも不承認の理由となっていることを明らかにした。

このような経緯の中で、同月三〇日午前、原告は再び鳥居校長に対し、夏期厚生計画参加の承認を求め、同校長は原告に対し、前日と同じ理由により承認はできない旨を告げたうえ、右申し出を撤回して午後も勤務に就くよう求めたが、原告はこれに従わず、同日午後一時五分、原告は鳥居校長の承認を得ないまま、夏期厚生計画に参加するとして、大浜小職員室から退出し、同日午後一時五分から午後五時一〇分までの勤務(四五分間の休憩時間を含む。)を欠くに至った。なお、原告は右のとおり勤務を欠くことについて、右時間相当分の給与が減額されることは覚悟していた。

(一〇)  市教委は、同年一一月一五日、県教委に対し、原告の右行為について、地公法三二条、三五条に違反すると認められるから公秩序維持の観点から懲戒処分に付せられるべきものと思料する旨の内申をし、その際、参考事項として、原告は相当分の給与減額を覚悟のうえで本件行為をしたこと、校長、教頭が長時間にわたり説得したが応じなかったこと、原告の行動は、先に不承認にもかかわらず夏期厚生計画に参加し、懲戒処分を受けた藤村教諭に同調したものであると原告自身言明していることを付記した。県教委は、右内申を受けて、原告から直接に事実の確認をすることなく、また、原告に弁明の機会を与えることもないまま、同年一二月七日、本件処分を行った。なお、被告は原告に対し、本件処分を告知する際、辞令及び処分説明書を交付して、本件処分の基礎とされた事実及び適用法令を明示した。

3  以上の事実を前提として本件処分の適法性について考察する。

(一)  本件処分の適法性判断の前提として、まず、原告の夏期厚生計画参加申し出に対し、鳥居校長がこれを承認しなかったことについての違法性の有無を検討することとする。

(1) 夏期厚生計画は、地公法四二条に基づき県費負担教職員の服務監督権者である市教委が職員の元気回復策として夏期に実施するものであり、職員が夏期厚生計画に参加する際の服務上の取扱は、碧南市公立学校教員にあっては、職専免条例の定めるところに従い、市教委の当該職員に対する夏期厚生計画への参加承認によって地公法三五条の職務専念義務が免除されることとなる。なお、市教委は、この承認に係る事務を各学校長に専決させている。そして、職員から夏期厚生計画参加申し出があった場合、専決権者である校長は、夏期厚生計画の趣旨及びこれにより当該職員が得る便益と夏期厚生計画参加によって生じる授業等の校務に対する支障とを比較考量したうえ、合理的な裁量をもって承認するか否かを決すべきものである。したがって、夏期厚生計画参加申し出に対する校長の不承認処分は、それに関する裁量が社会観念上著しく妥当性を欠き裁量権の濫用と認められる場合でない限り、裁量権の範囲内にあるものとして違法とならないものといわなければならない。

(2) 原告による昭和五六年九月三〇日午後における夏期厚生計画参加の申し出が承認されなかった理由は前記のとおりであるが、再度要約すれば、当時鳥居校長は、はみ出し部分については短縮期間中の午後以外は原則として授業等の校務に支障が生じるものと理解していたこと、当日は原告の担任する学級において授業が予定されていたが補欠教員の確保が困難な事情があり、また、運動会の練習等による授業の遅れを取り戻す必要のため自習は好ましくないなど具体的に授業に支障が生じる事情があったこと、他の職員ははみ出し部分について夏期厚生計画に参加していないところから、これとの均衡を欠く結果となること、参加申し出の時期が遅かったため学校側として対応策を講じる余裕がなかったことなどである。

鳥居校長はこれらを総合して、原告の右夏期厚生計画参加申し出はこれを不承認とすべきであると判断をしたものであり、不承認とするに際し鳥居校長は原告に対し、右不承認の理由につき、明確かつ理路整然とではないものの、そのおおよその趣旨は伝えている。そして、鳥居校長の右判断には、大浜小の具体的状況を踏まえたうえでの判断として一応の合理性があるものというべきであり、これをもって社会観念上著しく妥当性を欠くものということはできない。

(3) なるほど、県教委が定めた夏期厚生計画実施要領及びこれを受けて締結された県・市の口頭合意の趣旨(愛知県の段階においてははみ出し部分について前後二回夏期厚生計画に参加できるものとされ、碧南市の段階においてもはみ出し部分について一回は夏期厚生計画に参加できるものとされていた。なお、右市の口頭合意について、市校長会は「一回認めるよう努力する」とし、市教組は「一回取れる」としており、その表現に差異が存するが、参加承認についての専決権は各学校長が有するのであり、市校長会の合意に法律的に直接拘束されるものではないこと、いずれも授業等に支障がないことを条件としているのであるから、参加を申し出れば必ず承認しなければならないという趣旨ではないことを勘案すれば、右表現の差異は市校長会と市教組の立場の差に起因するものであって、合意内容の理解に差異があるものではないと解される。)に照らすと、市校長会の申合せ及び鳥居校長の市の口頭合意に対する理解が、はみ出し部分については短縮期間中に限られるとしたことは、いささか狭きに失するものといわざるを得ない。そして、市の口頭合意に関して右解釈をしたことにより、鳥居校長は、はみ出し部分における夏期厚生計画参加についてローテーションを組むなどの具体的方策を取ることなく、消極的姿勢に終始し、そのために大浜小の職員は誰もはみ出し部分において夏期厚生計画に参加することがない結果となり、また、右解釈が原告の本件夏期厚生計画参加申し出に対してもこれを不承認とする大きな要因となったことが窺える。しかしながら、夏期厚生計画参加承認は、前述のとおり校長がその裁量によって専決するものであり、市の口頭合意も校長に対して直接の法的拘束力を有するものではないこと、校長は参加申し出に対して、当該学校の具体的状況に応じて校務への支障の有無を判断するものであることを考慮すると、校長が校務に支障があること等を理由に不承認にすべきものとした判断に一応の合理性が認められる限り、前記事情があったとしても、そのことから直ちに不承認としたことが社会観念上著しく妥当性を欠くことになるものではない。

(4) さらに、鳥居校長は、不承認とするについて、原告の夏期厚生計画参加申し出が藤村教諭の行動及び主張に同調したものである点をも考慮したことは前記認定のとおりであるが、右事実を考慮の外に置いたとしても不承認としたことについては一応の合理性があることは前述のとおりであり、右の点が判断要素として加わったからといってそのことにより鳥居校長がした不承認が裁量権の濫用になるものでもない。

(5) なお、原告は、昭和五六年九月二五日の夏期厚生計画参加を申し出て、鳥居校長がこれを不承認としたことから、さらに同月三〇日の夏期厚生計画参加申し出をしたものであるが、同月二五日の夏期厚生計画参加申し出に対する不承認の理由は前記2の(八)のとおりであり、右不承認についても鳥居校長の措置が著しく妥当性を欠き裁量権を濫用するものということはできないし、また、同月二五日の夏期厚生計画参加申し出と同月三〇日の夏期厚生計画参加申し出とは別個の行為であるから、前者に対する不承認処分の瑕疵の有無が後者に対する不承認処分の違法性の有無に影響を及ぼすことはない。

(6) したがって、本件処分の前提となった原告の夏期厚生計画参加申し出に対する鳥居校長による不承認処分は適法なものというべきであり、原告主張の違法性はない。

(二)  以上の検討を前提として本件処分の適法性について判断する。

地方公務員につき地公法に定められた懲戒事由がある場合に、懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは、懲戒権者の裁量に任されているものと解され、懲戒権者が右裁量権の行使としてした懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当性を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして、違法とならないものというべきである。

そこで、本件処分につきそれが社会観念上著しく妥当性を欠き裁量権の濫用となるものといえるか否かについて検討を進める。

(1) 鳥居校長による本件不承認処分が適法なものであることは前記のとおりであるから、原告は地公法上の職務専念義務を免除されることはなかったというべきところ、それにもかかわらず、原告は、夏期厚生計画に参加すると称して昭和五六年九月三〇日午後一時五分から午後五時一〇分までの勤務を欠いたのであるから、原告の本件行為が懲戒事由に該当することは明らかである。

(2) 前述のとおり、本件行為に至る過程において、鳥居校長及び市校長会の市の口頭合意についての解釈にはいささか問題があり、また同校長が右解釈に基づいてした大浜小における夏期厚生計画実施に当たっての措置においても不適切な点があったことは否定し得ず、そのために大浜小においては市の口頭合意にもかかわらず、はみ出し部分において夏期厚生計画に現実に参加し得た職員が皆無であったという結果になっている。そして、右合意には直接の法的拘束力はないものとしても、承認権者である校長の団体と職員団体との間において交わされた合意である以上、職員がその実現について期待を抱くのは正当なものというべきであり、市校長会の構成員である各校長も右合意の実現に向けて努力すべき道義上の責任を負っているものというべきであるから、鳥居校長としては右合意の趣旨に則りその実現のため積極的努力をすべきであったのにこれを怠ったものとして非難されてもやむを得ない面も存する。原告の本件行為は、こうした鳥居校長の態度に対する抗議としての側面をも有するのであり、この点は本件処分の適法性の有無を判断するに当たって無視することはできない。しかしながら、その点を考慮しても、具体的に鳥居校長がした本件不承認処分は前述のとおり適法なものであり、他方、同校長は原告に対し勤務に就くよう説得したにもかかわらず、原告はこれを無視して勤務を欠いたものであること、原告は、職務専念義務が免除されないことを認識しながら、あえて、適法に夏期厚生計画に参加することができないことに対する抗議の意味を込めて本件行為に出たものであり、夏期厚生計画本来の目的という観点からは、これに参加すべき実質的な理由が希薄であったことが窺えることなどの事情に鑑みると、被告の本件処分が社会通念上著しく妥当性を欠くものとまでいうことはできない。

(3) また、被告は、県教組との昭和五六年度の夏期厚生計画についての交渉により、県校長会と県教組との口頭合意と同旨の内容について実質的に合意し、右口頭合意締結についても承認していたものであるから、市教委及び校長を監督する立場として右合意内容の実現のために努力すべき道義上の責任を負う立場にあったものといえるのであり、前述のとおり右口頭合意より後退した内容の市の口頭合意の締結について特に指導することもなく、また、市の口頭合意に照らしてもより狭きに失するような内容の市校長会の申合せについてもこれを放置していたもので、結局、大浜小において県の口頭合意の内容が実現されない結果になったものであるから、被告の右対応には批判の余地がないとはいえずこの点をさて置いて原告の本件行為に対し本件処分をすることは、いささか均衡を失するきらいはあるものの、前述の原告側にみられる事情も考え併せると、いまだ本件処分が著しく妥当性を欠くものとまではいえない。

(4) さらに、地公法二九条に基づく懲戒処分を行うに当たり、条例等によりその手続が規定されていない場合においても、懲戒処分の不利益処分としての性質に鑑み、憲法三一条の趣旨に則り適正な手続の保障がされるべきであり、原則として被処分者に対し告知と聴聞の機会を与える必要があるものと解される。そして、右手続を履践しないで懲戒権を行使した場合には、懲戒処分の不利益性の程度、右手続を履践しなかったことが懲戒処分の基礎となる事実の認定に影響を及ぼし、ひいては処分内容に影響を及ぼす可能性の程度を総合勘案し、右程度が著しい場合には裁量権の濫用となり、懲戒処分が違法となる場合もあるというべきである。

しかしながら、本件においては、本件処分は戒告処分であり、地公法上懲戒処分として規定された処分の中では最も程度の軽いものであること、懲戒事由としての原告の本件行為は、鳥居校長の面前で行われたものであり、懲戒処分の基礎となる事実の存否については原告もこれを争っておらず、右手続の履践を欠いたことにより右事実の認定に影響を及ぼす可能性はなかったこと、被告は原告に対し、本件処分を告知する際、辞令及び処分説明書を交付して、本件処分の基礎とされた事実及び適用法令を明示したことが認められる。

右事実によれば、被告が原告に対し、本件処分に際し、告知と聴聞の手続の履践を欠いたことにより本件処分が裁量権の濫用として違法となるものということはできない。

(三)  以上を総合すれば、被告が、原告の本件行為につき懲戒処分の中で最も程度が軽い戒告処分を選択して本件処分を行ったことは、社会観念上著しく妥当性を欠き裁量権を濫用し、あるいは裁量権の範囲を逸脱した違法な処分であるということはできず、本件処分は適法なものというべきである。

三  以上によれば、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 清水信之 裁判官 遠山和光 裁判官 根本渉は転補のため署名捺印することができない。裁判長裁判官 清水信之)

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